2021.05.11
築50年の建物の大規模修繕工事の内容とは?費用相場や注意すべきポイントも解説!
「築50年のマンションはどのような大規模修繕をするのだろう」
「築50年のマンションの大規模修繕にかかる費用が知りたい」
築50年という歴史のあるマンションの大規模修繕を行う際、こうお悩みになる場合も多いのではないでしょうか?
築年数が経過しているマンションの場合、劣化状況によっては大規模修繕の内容が大きく異なります。
それにともない、追加費用が必要になったり、建て替えを検討しなければいけなかったりなど、さまざまな問題も生じてくる可能性があるでしょう。
そこで今回は、築年数が50年の大規模修繕の際に押さえておきたい、以下のポイントを解説していきます。
・築50年の建物の大規模修繕工事の内容
・築50年の建物が大規模修繕において抱えやすい問題
・築50年の建物を大規模修繕するか建て替えるかを決めるためのポイント
・築50年の建物を大規模修繕する際にかかる費用相場
・築50年の建物の大規模修繕を行う際に注意しておきたいポイント
大規模修繕を依頼する際に大きなトラブルを抱えないためにも、ぜひ最後までご熟読ください。
築50年の建物の大規模修繕工事の内容
築50年の建物の大規模修繕に多い工事の内容として、以下の4つが挙げられます。
・防水工事
・給排水管の修繕
・外壁工事
・鉄筋部分の修繕工事
上記のように、築年数が50年の大規模修繕では、建物のメインにあたる箇所の工事が比較的多くなります。
それぞれの工事内容を詳しく解説していきましょう。
防水工事
防水工事は、主に屋根やベランダ、バルコニーなどから雨水が建物内に浸入するのを防ぐ工事です。
築50年の建物で一番発生している問題が、雨漏りです。
防水工事では、屋根に防水シートを張ったり、防水性のある塗料を塗ったりします。
雨水の浸入は建物自体の劣化へ繋がります。
そのため、防水工事はマンションやビルの寿命を維持するためにも欠かせません。
一般的には、塗料の耐用年数に応じて、一定周期で塗り直しが行われます。
給排水管の修繕
築年数が経つにつれて劣化が目立ちはじめる給排水管の修繕です。
給排水管が劣化すると、以下のような症状が現れます。
・漏水する
・赤水が発生する
・排水の流れが悪くなる
・蛇口の出が悪くなる
給排水管の耐用年数は40年とされているため、築50年の大規模修繕で修繕工事が行われる傾向にあります。
今まで上下水道に何も問題がなかったとしても、築年数が経過している建物であれば点検をして不具合がないか確認して対処するようにしましょう。
外壁工事
外壁の剥離による落下事故や雨漏りを防ぐためにも、外壁工事は必要です。
築年数が50年ともなると、塗装面のみでなく外壁自体が剥がれてしまう場合があります。
外壁が剥がれて落下してしまうと大きな事故にも繋がりかねません。
実際に、外壁タイルの落下による事故の報告もされています。
老朽化が激しい建物の場合は、建物診断を行い外壁自体の修繕も工事内容に含めるようにしましょう。
鉄筋部分の修繕工事
築50年となると、サビてしまった鉄筋部分の修繕工事が必要なケースも珍しくありません。
鉄筋コンクリートの耐用年数は47年です。
築年数が50年であれば、鉄筋部分の修繕時期として1つの目安になるでしょう。
特に鉄筋部分は建物の中心部です。
鉄筋部分のサビが原因で、建材が落下したり建物が崩落したりして大きな事故に繋がる恐れもあります。
一見、異常がないように見えても築年数が経過している建物であれば点検を行い、適した修繕工事を行うようにしましょう。
築50年の建物が大規模修繕において抱えやすい問題
築50年の建物が大規模修繕をする際に抱えやすい問題として、以下の2つが挙げられます。
・建物の耐用年数を迎える場合がある
・修繕積立金が不足する場合がある
いずれも築50年の建物の大規模修繕の際によくあるトラブルのため、問題点をあらかじめ押さえておくと、いざというときのために備えられるでしょう。
それぞれの問題点を詳しく解説していきます。
建物の耐用年数を迎える場合がある
1つ目は、築50年も経過している場合、建物自体の耐用年数を迎える場合があるという点です。
建物自体の寿命が近い場合、大規模修繕を行ったとしても大きな改善を期待できないケースがあります。
特に、建物の維持管理が適切に行われていないと、寿命が短くなっている可能性があります。
老朽化が著しい場合は大規模修繕ではなく、建て替えの検討が必要だということも視野に入れておきましょう。
一方で、適切な維持管理を行えば、建物は最長で120年まで耐用年数を維持できるという報告もあります。
大規模修繕を行う際は、今まで行ってきたメンテナンスや建物の状況をしっかりと把握して、残存の耐用年数を専門家に相談してみると良いでしょう。
修繕積立金が不足する場合がある
2つ目の問題は修繕積立金が不足する場合があるという点です。
修繕積立金は、建物の共用部分の修繕費用という名目で、入居者から毎月一定額が徴収されます。
しかし、入居者が減少すると毎月の積立金も少なくなってしまい、大規模修繕の際に費用が不足するケースがあります。
修繕積立金の額は長期修繕計画に基づいて決まるため、入居者の増減や建物の劣化状況によって、計画内容を一定周期で見直しておきましょう。
築50年の建物を大規模修繕するか建て替えるかを決めるためのポイント
築50年の建物を大規模修繕するか、建て替えるか決めるポイントを紹介します。
建物の築年数や老朽化による問題以外にも、大規模修繕を行うか建て替えたほうが良いか、判断するポイントがあります。
それぞれのポイントを以下で詳しく解説していきます。
大規模修繕する方がいいケース
築50年の建物を大規模修繕する方がいいケースとして、以下の2つのポイントが挙げられます。
・修繕後に建物の問題が改善される
・修繕積立金を今後も回収できる
大規模修繕を行うことで、今後も入居者が安全で快適に暮らせたり、資産価値を維持できたりする場合は大規模修繕を検討しましょう。
大規模修繕は建物の美観や機能を維持するものです。
そのため、修繕により新築時以上に建物の機能や資産価値が向上することはほぼありません。
しかし、劣化した建物の機能と資産価値が工事後に回復するのであれば、大規模修繕を行う方が建て替えよりも費用を抑えられるためおすすめです。
また、入居者が多く、修繕積立金を今後も計画通りに積み立てられるという場合も大規模修繕を行うと良いでしょう。
大規模修繕を行うメリットとしては、コストを抑えながら入居率を高められる可能性があることです。
新しく建て替えるよりも、コストを抑えつつ多くの入居者の獲得に期待ができます。
しかし、修繕による建物の機能と資産価値の回復はデメリットにもなりえます。
修繕により建物の美観や価値が維持できても、近隣に人気のマンションが新設された場合は競争で負ける可能性があるでしょう。
今後の入居率に影響する外部要因も踏まえて、修繕するか検討すると良いでしょう。
建て替えた方がいいケース
一方で、築50年の建物を建て替えたほうが良いケースとしては、以下の2つのポイントが挙げられます。
・修繕積立金が不足している
・修繕箇所が膨大である
修繕積立金は、建物の修繕費として入居者から集められます。
しかし、入居者の減少や滞納などにより、修繕積立金が不足している場合は思い切って建て替えを行うのもおすすめです。
もちろん、建て替えの方が大規模修繕よりも費用は高くなりますが、入居率や家賃の上昇など、長期的にみて利益が生まれる可能性があります。
また、修繕箇所が膨大な場合にも、大規模修繕よりも建て替えの方が長期的に見てお得なケースもあります。
建て替えのメリットとしてはやはり建物機能と資産価値の向上です。
建て替えは既存の建物の修繕ではないため、大幅な建物の機能と価値の向上が期待できます。
また入居率のアップや家賃を高く設定することにより、利益を増やすことも可能です。
建て替えのデメリットとしては、やはり費用がかかることです。
一時的に多くのキャッシュがでていくため、その後、修繕が必要になった場合に費用を支払えないということも考えられます。
建て替えにかかる費用や予算をしっかりと把握して、計画的に建て替えを行っていきましょう。
築50年の建物を大規模修繕する際にかかる費用相場
築50年の建物を大規模修繕する際にかかる費用相場は一戸あたり80.9万円、1平方メートルあたりでは11,931円です。
大規模修繕の費用相場は、以下の通りです。
各回の大規模修繕を的確に行っていれば、老朽化の進行も遅くなり、修繕箇所が少なくなるため費用を抑えられます。
しかし、維持管理を怠っていた場合は、劣化状況によっては修繕費用が高額になるケースもあります。
築年数が経過しているから修繕費用が高額になるということではなく、建物の劣化状況によって工事価格は大きく異なるのです。
築50年の建物の大規模修繕費用を抑える方法
大規模修繕の費用を抑える方法には、以下の2つが挙げられます。
・丁寧なメンテナンスを定期的に行う
・前回までの大規模修繕を丁寧に行う
いずれも、新築の建物の場合でもおすすめされている修繕費用を抑えるための方法です。
以下でそれぞれの方法を詳しく解説していきます。
細やかなメンテナンスを定期的に行う
大規模修繕費用を抑えるには、定期的に細やかなメンテナンスを行うのが大切です。
丁寧なメンテナンスを定期的に行うことで、建物の劣化を遅らせることができます。
例えば、屋上やバルコニーの清掃をこまめに行うことで、雨水が溜まるのを防ぎ、防水機能の劣化を遅らせられます。
特に築50年ともなれば、少しの劣化や腐食が建物へ大きな影響を及ぼすため、早めにメンテナンスをするようにしましょう。
劣化を遅らせることで、大規模修繕の際に修繕箇所を少なくできて費用を抑えられるでしょう。
前回までの大規模修繕を丁寧に行う
前回までの大規模修繕を丁寧に行うことで、今回の工事にかかる費用が抑えられるケースもあります。
大規模修繕の際、費用を抑えるために劣化が軽微であれば、その箇所の修繕を後回しにする場合があるかもしれません。
しかし、劣化が進んでから修繕するのでは工事にかかる費用が高額となってしまうでしょう。
建物の劣化は早めに対策を行うことで、長期的に見てトータルの費用を安く抑えられます。
築50年となると、後回しにしていた劣化が致命的となり、大規模修繕では対処できないという場合もあるでしょう。
3回目までの大規模修繕を丁寧に行い、工事費用を抑えるだけでなく建物の耐久性や機能性も維持するようにしましょう。
築50年の建物の大規模修繕を行う際に注意しておきたいポイント
築50年の建物の大規模修繕を行う際に注意しておきたいポイントとして、以下の3つが挙げられます。
・建物調査を徹底して行う
・入居者のニーズを把握しておく
・法定基準が満たされているか確認する
上記ポイントを押さえておくことで、追加費用がかかったり、入居者の反感を買ったりなどといったさまざまなトラブルを防ぎやすくなるでしょう。
それぞれのポイントの具体的な内容を以下で解説していきます。
建物調査を徹底して行う
大規模修繕の際は、建物調査を徹底して行い修繕箇所を細かく把握しておきましょう。
築50年の建物は、大規模修繕で施工不良が起きると致命的となります。
例えば、経年劣化している箇所を発見できずにその後も放置してしまうと、建物全体を維持できなくなる場合もあります。
新築の建物の場合、次の大規模修繕の際に改善できる可能性があるでしょう。
しかし、築50年となると、施工不良によって建物の倒壊や機能停止など大きなトラブルが発生する危険性が高いです。
費用をかけて大規模修繕を行ったにもかかわらず、致命的な欠陥により追加費用が必要になったり、建て替えが必要になったりする恐れがあります。
築年数の経過している建物ほど、建物調査は注意して行いましょう。
入居者のニーズを把握しておく
入居者のニーズを把握して大規模修繕することも、工事を成功させるために押さえておきたいポイントとなります。
築50年となると、入居者も高齢化している場合が多いため、それぞれのニーズを確認して把握することが重要です。
1回目、2回目の大規模修繕とは違い、防犯性の向上やバリアフリー化などの検討が必要な場合もあるでしょう。
反対に、ニーズを把握せずに大規模修繕を行うと、後から「こうしてほしかった」という入居者の不満の声が出てくる可能性もあります。
築年数の経過している建物の場合は、ニーズをしっかりと把握して入居者の満足度を高めていくことが大切です。
建物の法定基準が満たされているか確認する
築50年の建物の場合、法定基準が満たされているか確認することも重要です。
築50年の建物では、特に「耐震基準」が満たされているか確認する必要があります。
現在の「新耐震基準法」は1981年に制定されています。
1981年よりも前に建てられたマンションは、旧耐震基準に基づいて建設されている可能性が高いです。
現在では建物は新耐震基準法に基づいて建設することが義務付けられているため、大規模修繕時に耐震工事が必要かどうか確認しておきましょう。
築50年の建物は状態によって大規模修繕か建て替えか見極めよう
築50年の建物は、劣化状況によって大規模修繕か建て替えるか見極めることが大切です。
また、入居率や必要な費用なども考慮して適切に判断しなければ、後々大きなトラブルに繋がる恐れもあります。
適切な判断をするためにも、専門家に相談しながら大規模修繕か建て替えかを決断するようにしましょう。
大規模修繕工事を依頼する業者の選び方を知りたい場合は「大規模修繕の工事業者はどう選べばいい?会社の選び方や注意点を徹底解説!」をご覧ください。